2018年4月21日 第1回研究会

日時:2018年4月21日(土)13:30~15:30
於:早稲田大学 戸山キャンパス

 

 

【プログラム】

1.研究発表
  「バレエ伴奏者」とは何者か?-19世紀後半のパリ・オペラ座の場合
  永井玉藻(武蔵野音楽大学、慶應義塾大学非常勤講師)

19世紀のパリ・オペラ座において、バレエの伴奏は弦楽器奏者の仕事だった。彼ら伴奏者には、日々のリハーサルのために、弦楽器伴奏者専用のリダクション譜も作成されていた。しかし、こうした伴奏者については、未だ不明な点が多い。

そこで今回の発表では、フランス国立図書館オペラ座図書館や、フランス国立古文書館に保存されている資料をもとに、当時のオペラ座に勤務していた伴奏者の経歴、給与、勤務形態などを明らかにする。また、弦楽器奏者によるバレエ伴奏が衰退した時期の特定を試みる。

2.資料紹介
  『帝室劇場年鑑』(1892-1915)
  平野恵美子(東京大学文学部 助教)

革命前のモスクワとサンクトペテルブルクの6つの帝室劇場の全公式記録。このうち、バレエは主としてボリショイ劇場とマリインスキー劇場で行われていた。上演作品、出演者等の詳細な記録を知ることのできる貴重な資料。評論等も掲載された。ディアギレフも一時、編集に携わっていた。時間が余れば、『芸術世界』誌等、当時のその他の文芸誌や新聞のバレエ評なども合わせて紹介したい。

 

【報告】

永井玉藻さんの研究発表「『バレエ伴奏者』とは何者か?-19世紀後半のパリ・オペラ座の場合」は、当時のオペラ座の雇用契約書、給与記録ほか各種の一次資料を駆使して、バレエ伴奏者の実態を明らかにしようというもの。また、現存する当時の伴奏用楽譜(répétiteur)から弦楽器伴奏の可能性を読み取り、さらに弦楽器伴奏からピアノ伴奏への移行の時期を推定するという問題にも踏み込んだ大変意欲的なご発表でした。

続いて、平野恵美子さんには『帝室劇場年鑑』(1892~1915)の資料紹介をお願いしました。年鑑発行の経緯や、販売価格、編集者についてのご説明に続き、年鑑の内容について詳しくご紹介いただきました。扱われる項目が多岐にわたっており、図版も豊富に掲載されているということもあり、歴史研究の資料として色々な形で活用可能であると思われます。